白内障手術の知っておきたいリスク

白内障の手術は比較的安全性の高い治療です。しかしながら、外科的に治療するためわずかではありますが合併症が起こることがあります。

今回は白内障手術で起こりうるリスクをおもにお伝えします。




駆逐性(くちくせい)出血


手術中に脈絡膜の血管が破綻して出血する合併症です。

急な血圧上昇や強く緊張した場合、咳込んだ場合などの負荷が加わった場合や手術中の急激な眼圧低下などで出血が起こりやすいとされています。

駆逐性出血が起こると、多量出血により最悪の場合失明してしまいます。

現在では手術技術や機器の進歩により術中の眼圧管理が行いやすくなり、発生頻度は10000人に1件程度と非常に稀な合併症です。

一旦手術を中止し、後日十分な止血を確認したのちに血を抜く手術を行う場合があります。




眼圧上昇


白内障の手術を受けたあと、一過性に眼圧が上がってしまうことがあります。眼圧上昇は緑内障の原因になるといわれています。

長期に眼圧上昇がつづく場合は、眼圧を下げるための目薬や内服薬を処方することがあります。




術後感染(眼内炎)


白内障手術の傷は非常に小さいですが、まれに手術創から細菌が入り込み、眼球内が炎症を起こして化膿してしまうことがあります。数千人に1人に起こるといわれており、状態によっては抗生剤の眼内注射や点滴治療、緊急手術が必要になる場合があります。

多くの方は治療により回復しますが、稀に高度な視力障害が残る場合もあります。

念入りに眼内の消毒を行い抗生剤を点眼することで、近年の感染率は非常に低くなってきています。




後嚢破損(こうのう破損)と水晶体落下


水晶体を支えるチン小帯が元々弱い方や白内障の状態により手術中にチン小帯の断裂や水晶体の周りにある袋(水晶体嚢)が破損する場合があります。

水晶体嚢の裏側が破れてしまうことを後嚢破損といい、このような場合にも眼内レンズは水晶体嚢以外の場所に挿入して固定することで術後視力の回復を期待できます。

この場合に水晶体嚢の裏側が破れると稀に水晶体の一部が硝子体に落ちることがあります。

水晶体が落ちなければ通常通り手術を進行できますが、除去すべき水晶体の一部が落下してしまうと、それに対応できる設備がある施設での再手術が必要になります。




後発白内障


白内障手術では濁った水晶体を取り除き、残った水晶体嚢の中に眼内レンズを挿入します。この嚢は透明な袋状の組織で、術後水晶体の上皮細胞が増残し濁ってくることがあります。

手術後5年以内に2割程度の割合で発症する比較的よく見られる合併症です。

「目のかすみ」「視力低下」等の症状が起こります。5分程度のレーザーによる治療が可能です。




水疱性角膜症


浅前房や硬い核の場合、白内障手術により角膜内皮と呼ばれる細胞が減少することがあります。

内皮細胞は角膜の内側にあり角膜内の水分量を調節している細胞です。

再生機能がなく加齢やコンタクトの無理な装用、眼内の炎症や外傷、眼内の手術などで減少します。

この細胞が一定数以下にまで減少するとポンプ機能が低下して角膜内の水分の排出ができなくなり角膜が浮腫み透明性が低下します。

通常は術前に内皮を測定して、安全域で手術を行うため稀な合併症です。

ソフトコンタクトレンズの装用や高張食塩水の点眼などで改善が得られない場合には全層角膜移植や角膜内皮移植などの治療を行う場合もあります。




その他の合併症


手術による炎症反応により角膜の混濁が長引き視力の回復まで時間がかかる場合や目の奥に炎症が波及し網膜が浮腫むことがありますが、多くの場合は治療により改善します。

またごく稀に術後眼内に非感染性の強い炎症が発生する場合もありステロイド剤などによる治療を行います。




まとめ


白内障の手術は、ほかの手術に比べて安全性が高いといわれています。

しかしながら、外科的手術であるため絶対に安心安全ということではありません。

日本中で1年間に140万件程白内障手術が行われていますが、数十万分の1という確率で残念ながら失明事例の報告があります。これは偶然交通事故で無くなるより低い確率です。

手術を受ける場合は、どのようなリスクや後遺症があるかしっかり理解し、不安なことがあれば担当医師に相談するようにしてください。

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